コロ 第三章 1話

コロ(小説)
朗読小説【コロ!!】 3章 第1話「夢の中のレッスン」

あらすじ

コロこと胡炉玉命(コロタマノミコト)は最高神である天照大神(あまてらすおおみかみ)とその執事である思兼命(おもいかねのみこと)により目覚めさせられ、自分が『サッカーボールの神』であることを知らされる。

コロを、サッカーの天才と称される飛鳥井雅に宿らせようと計画していた天照達だったが、それを知る由もないコロは無意識のうちに藤原成という少年に宿ってしまった。

成と共に生きる条件として、全国中学校サッカー大会予選突破を約束させられ、叶わぬ場合は成の命が奪われることとなってしまう。

自身の力のなさを嘆くコロだったが、思兼の取りなしもあり、天照から新たな能力を授かった。

夢の中で成としゃべることができるというその能力。

果たしてその効果のほどは?

コロ!! あらすじ

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コロ!! 2ー3話
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3-1

『やあ、また会えたね』

『うわあ、びっくりした。なんだまたお前か』

『あれ、どうしたの? 今日は、もう逃げないのかい?』

『もういい加減なれたのさ。お前に何かしようとする気がないことも、このあいだ初めて喋ってみた時に、なんとなく分かったよ』

『それはよかった。中々心を開いてくれないから、どうしようかと思ったんだ』

『どうしようかと思ったのは、僕だって同じさ。なにせここから出れば、お前と喋れたことは忘れちゃうんだからさ。喋り方だって、ここではなんだか変だ。お前の喋り方がうつっちゃったのかな? 僕は普段「僕」なんて使わないんだ。友人達に聞かれたら、なんだその言葉はと笑われちゃうよ』

『まあまあ、いいじゃないか。それに、ボクと話せたことは忘れちゃうけど、学んだこと自体は忘れないよ』

『うーん、そんな都合がいいことがあるのかなあ?』

『ボクだって最初そう思ったさ。でも偉い神様が言ったんだから、間違いないよ』

『そういうものか。じゃあ細かいことには目をつぶって、せっかくだから色々教えてもらうとするかな。お前、そんなナリをして、目茶苦茶物知りだったからな』

『ふふふ、なんたってこれでも僕は凄いんだからね。では、さっそく始めようじゃないか。なんだかんだいって、ここまでこぎつけるのに、結構時間を使ってしまったからね。まず言及したいのは、体の柔軟性だ。君たち日本人の体は、はっきり言って硬い。目茶苦茶硬い。鏡餅と同じくらい硬い。カチンコチンといっていい』

『柔軟性? そんなもの別にどうだっていいだろう? それよりもっと、こう――、蹴り方的なことから教えてくれよ』

『駄目駄目。皆そんな考え方だから、体の硬い競技者ばかりなんだ。柔軟運動のことを、準備体操くらいにしか思っていないだろう?』

『そりゃだって、あれは準備体操そのものじゃないか。準備体操のことを準備体操だと思って、何が悪いんだい?』

『違う、あれだって立派な筋肉の訓練そのものなんだ。いい加減にやってるから、体の内側の筋肉が発達していない。むしろ無駄に負荷をかけた訓練をして、邪魔な筋肉をつける傾向にある。邪魔な筋肉のついた体は、均衡に欠ける。そもそも筋肉というものは、速筋、遅筋に大別され――』

『わかった――、わかったよ。じゃあ次から、ちゃんと時間をかけて柔軟運動をするよ。それでいいか?』

『それでもいいんだけど、もっといいものがある。君は「ヨーガ」を知っているかい?』

『よーが?』

『古代印度(こだいいんど)で生まれた心身鍛錬、そして精神統一法だ。まあ、難しい説明は省くけれど、これを行うと体の「核」を鍛えられる』

『そんなもの鍛えて、上手くなれるのか?』

『なるともさ。まず、所作が美しくなる』

『美しく? そんなの僕は別に……』

『駄目駄目! いいかい? 一番大切な事――、それは美しくあることだ。脚だけじゃなく指の先、いや、髪の毛の先まで気を配るんだ。周りの観客だけでなく、神々さえも魅了するようにね。美しい動きには無駄がない。美しいということは、全てにおいて正しい。その第一歩が、柔軟性と体の「核」を鍛えることだ。美しく美しく、神々までを魅了するほどに美しく。この意識がとてもとても大事なんだ。なのに君ときたら――』

『わかったって。わかったから、そんなにいちいち猿みたいに興奮するんじゃあないよ。まず、それを習えばいいんだろ? できるようになったら、ちゃんと蹴り方も教えてくれよ』

『猿は余計だが、いいともさ。それじゃあ早速始めよう。まずは呼吸法から』

『呼吸法? そんなとこからやるのか……。それで本当に上手くなれるのか?』

『まずは、やってみてのお楽しみだ。ふふふ、君が上達するのが楽しみだよ』

「ななな、なんてことなの。ここはポカモンの楽園なの? レアで高ステータスなポカモンが取り放題じゃない! しかも時間毎に、また違う種類のポカモンが! くくく、これはクッシーには内緒ね。ライバルに差をつけろ! ポカモン、ゲットだぜ!」

 成の通う、ここ「秋菊中学校」のグラウンドには、ポカモンが大量発生しているらしい。

 またしてもコロの元にやってきた天照達だったが、溢れかえるポカモンに、すっかり我を忘れている。

 そして独り言からも、性格の悪さが窺える。

 なぜなら「クッシー」とは、天照に頻繁にポカモンの情報を教えてくれる者であったはずだ。なのに、自分が絶好の狩場を見つけた途端、独り占めにしようとしているのだ。

 救う側の神であるはずのこいつが、一番救えない。

 だがコロとしては、このままポカモンをプレイするだけで帰ってくれた方が助かる、というのが本当のところだ。

 やることが無くなれば、どうせまたイチャモンをつけてくるに違いないのだから。

「藤原成の調子はいかがでしょうか、コロ様?」

 天照の執事である思兼が、リラックスした表情でコロに尋ねてくる。

 ヤツがポカモンに熱中している間、一番安心できるのは、実は思兼の方なのかもしれない。いや、きっとそうだ。

「おかげさまで、めちゃくちゃいいんです。成はどんどん上達してるんだ」

 夢の中で会話ができるようになり、成は少しずつ上達している。

 微々たる効果しかあげることができなかった、元来コロが持つサッカーボールの神としての能力も、成への伝達性が上がったことにより、上々の成果を上げていた。

「ボクったら、そこまで力がないわけじゃなかったみたい。成のスキルは今、チーム内で一つ二つ抜きん出てる」

「ふむ、神と人間は寄り添いあってこそ、ということですな。それはよかった。練習を見に来た甲斐があります」

「見てない神もいますけどね」

 天照は、空の上で依然としてポカモンタイムだ。

「しかし、中々練習が始まりませんな? ずっと準備体操をしているようですが……」

「ああ、これはれっきとした練習ですよ。ボクが教えた事を、キャプテンである成がチームに広めたんだ」

 成の号令に従い、サッカー部の面々は、ヨガを基にしたストレッチに励んでいる。

 成は懐が広い。チームメイトは、同時にライバルでもある。なのに一切躊躇する事なく、上達の秘訣を皆に話し、共有する。

 有益な情報を独占しようとする阿呆の権化天照とは、えらい違いだ。

 誇らしくなったコロは、ついついグラウンドの上を、コロコロと転がってしまう。

 成もそのチームメイトも上達し、きっとこのチームは強くなる。

「この――」

「へ?」

「バカコロが!」

「うげえ」

 突如コロは体に衝撃を受け、弾き飛ばされた。

「レアポカモンに逃げられちゃったじゃないの! どうしてくれるのよ」

 衝撃の主は天照である。こんなことをするヤツは、こいつしか存在しないということは、最早考えるまでもない。

「いてて、そんなこと知らないよお。ボクとポカモンは関係ないじゃないか!」

「今、どうせロクでもないこと考えていたでしょう? きっとそのせいよ!」

 こいつはエスパーかと、コロはおもわずギクリとする。「阿呆の権化天照」と心で毒づいていたのは本当だからだ。

 もっとも、そのせいでポカモンが逃げたというのは、全くもって納得できないが。

「まったくもう。それに上で聞いてりゃ、これのどこが練習なのよ? ちゃんとあのガキんちょを、超人に育てたんでしょうね?」

 阿呆の権化――もとい天照大神は、スマホを着物の帯に差し込みながら無茶苦茶を言う。

「一朝一夕でそんなわけにいかないよ。それに時間をかけても、成を人間離れした超人になんてしたくないし、できない。とにかく、まずは基礎だよ」

「だからってなんであんな体操なのよ。しょうがないわね。こうなったら私が【セリエA養成ギブス】を……」

 そう言いながら天照は、何処からか金属のバネでできた禍々しい何かを召喚する。

 昔野球テレビアニメの主人公が、父親に着けさせられていた筋力鍛錬器具にそっくりだ。

 今の世の基準に照らし合わせれば、虐待の結晶のような代物である。

「そんなことしたら台無しだよ! 中学生に不要な筋肉をつけさせるべきじゃないんだ」

 こいつに何かをさせたなら、本当に全部台無しだ。考え方が、昭和のそれなのだから。

「それに見てごらんよ。今やってるあれは、ヨガの「太陽礼拝」ポーズだよ。太陽神であらせる天照大御神様なら、誠に喜ばしい限りじゃないか」

「インド式で礼拝されても、嬉しかないわよ」

 セリエA養成ギブスとやらでバシリと叩かれ、コロは呻く。

 どうやら、コロには蹴りが効かないことを学習したらしい。全くもって性格が悪い。

「痛いなあ、まったくもう。じゃあ、いい例があるよ。ちょっと隣を見てくれるかい?」

「隣?」

 天照と思兼はコロに促され、サッカー部の使用するコートの隣に目をやる。

「バスケットボール部の練習コートじゃない。サッカーと関係ないでしょう? バスケは手、サッカーは足を使ってやるものよ。天と地ほども違う競技だわ」

 サッカー部の隣には、バスケットボール部の野外練習コートがある。バスケ部が本来使用すべきは体育館なのだが、そこはバレーボール部や体操部といった他の運動部も使用するため、週のうち半分は野外で練習しているのだ。

コロは大きく息を吸い込み、あれこれ天照に文句を言われながらもサッカーの動きをバスケットに置き換え、諸々の効果のほどを目の前の2神に説明した。

(コロの長い説明はこちら

コロの長い説明
 「いや、バスケットもサッカーも、二つの競技は共通する点がとても多いんだよ。相手のマークをパスやドリブルで外し、ゴールを決める。フィールドの大きさと、ボールを扱う身体の部位こそ違えど、基本的なことは同じさ。ボクは一応ボールの神なん...

バスケ部の運動神経のそれほどよくないモジャモジャ頭の少年と、俊敏なセンス溢れる茶髪の少年に着目したその説明は、なんとかこの無茶苦茶な神の理解を得たようだ。

途中何度も叩かれはしたのだが、、、。

「ふーん、まあ藤原成が、あの茶髪とモジャが混じったようになるなら、悪くないかもね。目指せ、茶髪モジャってわけね」

「まあそういうことでいいかな。目指すべきところはもっと上だけど。あ、サッカー部の方もそろそろ本格的な練習が始まるよ! 成の活躍を見てみてよ」

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