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コロこと胡炉玉命(コロタマノミコト)は最高神である天照大神(あまてらすおおみかみ)とその執事である思兼命(おもいかねのみこと)により目覚めさせられ、自分が『サッカーボールの神』であることを知らされる。
コロを、サッカーの天才と称される飛鳥井雅に宿らせようと計画していた天照達だったが、それを知る由もないコロは無意識のうちに藤原成という少年に宿ってしまった。
成と共に生きる条件として、全国中学校サッカー大会予選突破を約束させられ、叶わぬ場合は成の命が奪われることとなってしまう。
成を一流の選手に育て上げ、成の命を守ると決心した。
しかし成と暮らし始めて1週間、コロは自分の力の無さを痛感していた。
そんな折天照が現れて、1つ能力を与えてくれるという。
期待に胸を膨らませるコロであったが、果たして――?
コロ!! あらすじ
2-1話はこちら

2-2
突如降って湧いた喜びと期待に、空気圧の高まったコロの体は弾けてしまいそうだ。
「ふふふん、もっと褒め称えなさい。それを使えばいかに無能なガキんちょといえど、瞬く間に世界のトップスターの仲間入りよ! さあこの中から一つ、どんな能力でも選ぶといいわ」
そう叫ぶや否や、天照は宙空に無数のカードを放り投げ、自身の周りにそれを浮かべた。

十枚ほどだろうか。ふわりと浮かぶカード達には、それぞれ難しそうな漢字が書かれてある。
「どれでも、と言われても分からないよお。例えば、これはどんな能力なんだい?」
コロはとりあえず、一番手近にあったカードの前に行き、天照に尋ねる。
「それはね、えっと、シュートが凄くなるの! このガキンチョがシュートを打った瞬間にあんたが「えい」と念じれば、ボールはキーパを吹き飛ばし、ゴールネットを突き破り、宇宙の彼方まで飛んでいくわ」
「……じゃあこれは?」
「えっと、これはそうね、シュートが燃えるわ!」
「……これは?」
「これはあれよ。消えるの。シュートが消えるのよ」
「……これは?」
「ええ? めんどくさいなあ。これはそうねえ、瞬間移動。瞬間移動にしましょう。あんたがえいと念じたら、フィールドを縦横無尽に一瞬で動けるの。パッ、パッ、パッ、とね」
天照は手をグーパーして、消失と出現をあらわしてみせる。
「――使えるか」
「へ?」
「んなもん使えるわけないだろう、って言ってるんだよお!」

コロは叫び、ボールである自身の体の弾力と壁の反動を利用し、天照に突進していた。
だがその動きはコロの意に反し鋭角にカーブし、思兼にキャッチされてしまった。
最高位に君臨する神に飛びかかることは、きっと許されないのだろう。
だが、思わず激昂するのも仕方がないというものだ。
そんな人間離れした力を得て成が使ってしまったら、いったい彼はどうなってしまうのだ。思兼の手の中で、コロは再び狂ったチワワのように叫びだす。
「成がバケモノ呼ばわりされたらどうするんだ。そんな力をあげちゃったら、世界中のマスコミが成に殺到して、サッカーどころじゃなくなってしまうに決まってるだろう? しかもその訳のわからない能力は、今適当に考えたものだろう? なんだよ、この思わせぶりなカードは。きっと意味なんかないんだろう? まったく、キミは成を貶めたいのかい?」
「ふん、これはドンキのパーティーグッズコーナーに売ってたのよ。なによ、あんなに舞い上がって喜んでいたくせに。じゃあもう、あんたはその微妙な能力を使って、せいぜい見事にドベをキープすることね。ほんっとに、わがままなんだから」
「ああ、そうするとも!」
本当に話が通じない阿呆だ。
もう自分一人で――、いや、自分一神でがんばるしかない。
「まあまあお二方とも」
思兼が、その手の中でコロをころりと回しながら、取りなしてくる。
「では逆にコロ様にお聞きします」
縦に半周させられたコロは、逆さになった思兼と目が合った。

「コロ様が授かりたい能力は、どんなものなのでしょうか? 要望があれば、仰ってみてはいかがですか?」
「ボクが授かりたい能力……」
それはどんなものだろう?
そういえば、自分の無力さに嘆くばかりで、そんなことを考えたことはなかった。
コロは、成と出会ってからのことを思い出してみた。
成と共にサッカーという競技に接する時、ボクは何を思っただろう。
喜びの最中に、何を欲しただろう。
成のシュート力を上げたい?
それとも走力?
それともドリブルで一瞬にして抜き去るアジリティー?
正確無比なパスワーク?
当たり負けしない強靭なフィジカル?
マークを外しチャンスに切り込むクイックネス?
司令塔に必要な、ゲームメイク力?
ファンタジスタに不可欠な、独創的な発想力?
空気穴から湯気がでるほど、コロは頭の中身を回転させる。
――そうだ。
コロの体を確信的な何かが貫いた。
ボクはずっと思っていた。
こうなればいいと、ずっと考えていたんだ。
ボクは、ボクは――。
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