コロ!!第7章3話

コロ(小説)

 試合が始まり成と共にフィールドを駆け回っても、コロの気持ちは沈んだままだ。

 とはいえ思兼の心配していたようなことは起きず、むしろ成の調子はいつにも増してよい。

 体に連戦の疲れはなく、羽が生えたような軽さを成が感じていることが、コロに伝わってくる。

 鍛えられた両の足は、上質なゴムのように収縮を繰り替えし、成は前線を俊敏に動き回る。

 ボールもしっかり足についており、いつも以上に自在にコントロールすることができている。

 そのうえ飛鳥井雅の復帰である。

 トップ下の彼から最前線の成へと繋がるラインが、凄まじくパワーアップしている。

 だが、コロの気持ちは晴れはしない。

 むしろ試合が始まる前より、さらに落ち込んでいる。

 何故か。

 チームとしての実力が違いすぎるのだ。

 山城中は、成と飛鳥井が唯一の脅威と見るが早いか、即座に二人にマークをつけ、動きを修正している。

 その上で、攻撃の起点となる飛鳥井にボールが入らないように、巧みに連携をとり中盤を固める。

 U15日本代表、難波宗の手腕である。

 開始3分も経たないうちに、もう前線へのボール補給経路を完璧に遮断したのだ。

「なんとか前線へボールを――」

 秋菊の中盤が前がかりになったその時を、山城中は見逃さなかった。

 飛鳥井へ入ろうとするパスを難波がカットするや、閃光のようなパスが、フィールド上を駆け巡る。

 まるでどこのフォーメーションが崩れていたかを指導するかのように、空いているスペースからスペースへとボールが運ばれ、最終的に嘘のようにぽっかり空いたゴールという名のスペースへ、勢いよくボールが突き刺さった。

 0-1

 決めたのは難波宗、その人である。

 前半開始4分、山城中学のゴールが、早くも決まってしまったのだ。

 いや、早くも決まった、というのは見ている観客の心情だろう。

 コロからすれば「4分間もよくもった」というのが正直なところだ。

 もっと早く点を取られていても、なんら不思議ではなかったのだ。

 あの大敗から半年、山城中との差は未だ絶望的なほど大きい。

 サッカーボールの神であるコロは、幾千万の攻防シミュレーションを同時に展開し、最適解を選び出せる

 ――勝利へのプランは、ある。

 だがそれは実現不可能だ。

 実現させるためには成か飛鳥井のどちらかが、いや、どちらもが、階段を飛ばして上のステージにいかなければならない。

 それにイザナギの産み落とした神々の加護も、やはり大きい。

 主に、身体能力の上昇を促す神々なのだろう。

 山城中の選手達が普段よりも体の軽さを感じていることが、ボールに宿り蹴られる度にコロに伝わってくる。

「久しぶりだね、藤原、――それと雅」

 ゴール後、試合再開の間を縫って、難波宗が前線にいる成と飛鳥井に声をかけてきた。

「試合中に喋るんじゃねえよ」

 穏やかに応える成と違い、飛鳥井の対応は冷たい。

 苦い顔をする親戚に構わず、難波は成に語りかける。

「しかしびっくりしたね。突然自分の家と学校が埼玉県になるわ、今日の決勝の相手が君たちになるわ、おまけにこの会場だろう? みんなは「まあいっか」で済ませているけど、どう考えてもムチャクチャだよね? それに今日は何故だかやたら体が軽いから、夢でも見てるのかと疑ってしまうよ」

 難波は呆れたように辺りを見回す。

 会場では20万人の大観衆が、中学生達に声援を送っている。

 応援は、ご丁寧にも丁度半分に分かれているようだ。

 赤いユニフォームと青いユニフォームが観客席を二分していることが、それを示している。変なところで平等である。

 そっぽを向いたままの飛鳥井に、難波が言う。

「雅、お前が逃げている間、俺はどんどん先に行くぞ?」

 飛鳥井もそうだが、難波の方も飛鳥井に喋る時は語気が強めの様だ。同い年の親戚同士、昔からのライバル関係故なのかもしれない。

「別に逃げてなんかねえさ。お前が鞠を蹴っている間、おれはボールを蹴っている。それに高校かユースに行ったら、イヤってほどやりあうようになるだろうよ」

「だからお前はダメなんだよ、雅」

「何!?」

 まさか公式戦で殴り合うことはないだろうが、そうなってもおかしくないほどのピリつきようだ。

 温厚そうな難波がここまで食ってかかるとは、二人の間に何があったのだろう。

「おれは高校やユースには行かない。中学を卒業したらプロになる」

「プロ? Jリーグってこと?」

 成が驚き、声をあげた。その驚きはコロも同じである。

 そして察するに、飛鳥井もまた同様であろう。

 難波が成の問いに、「その通り」と頷きを返す。

「春にはもう内定していたんだ。夏休みはクラブの練習に合流するし、秋からはほとんど学校にはいかない。俺は今もこれからも、お前の先を行く。絶対に逃げずにな」

 難波はそう言い放ち、再び始まる秋菊の攻撃に備え、自らの守備位置についた。

 コロは飛鳥井の表情を窺うが、美しい髪がその心情を隠す。

 ただそれが穏やかでないであろうことは、想像に難くない。

 ここにきて、難波は心理戦を仕掛けてきたのか?

 いや、そんなタイプではないだろう。

 そしてプロ行きを自慢するようなタイプでもない。

 だが二人の間に何か深いわだかまりがあるのは、もはや確実といえた。

 だが今はそれどころではない。

 何とか一点を返さなければならない。

 雑念を振り払い、コロは再び試合に集中していった。

「くそっ、全然ダメじゃねえか、俺たち」

 空になったスポーツドリンクの容器を、護が床に叩きつける。

 容器はカンカンと床を跳ね所在無く転がるが、それを拾うものは誰もいない。

 皆が一様に下を向いている。

 0-4

 これが前半終了時のスコアだ。

 無論「0」が秋菊中、「4」が山城中である。

 そして今はハーフタイム、10分間の休憩中だ。

 あの大敗から半年、未だ大きかった実力差を目の当たりにして、誰もが言葉を失くしている。

 彼らは知る由もないことだが、イザナギによる山城中への援護がなくても、同じような結果だっただろう。

 今日の点数差は、18-0だった半年前ほどではない。

 だが、そんなことは何の慰めにもならない。

「前回よりマシだからよくやれている」などと口にした時点で、それは敗けを認めるに等しい。

 けれど口を開けばそう言ってしまいそうなのだろう、皆一様に口を噤む。

 無駄に豪華で広いロッカールームが、静寂をより際立たせていた。

 こういう時、味方を鼓舞しなければならないのは、キャプテンの成だろう。

 だが言葉がでてこない。

 徹底マークにあっていたとはいえ、ほとんどボールにすら触れられていないのだ。

 こんな不甲斐ない自分に何が言える――、歯ぎしりするような成の心の声を、コロは聞いていた。

 作戦会議すらできずに数分が過ぎ、皆機械的に後半への身支度を整え始めた。

 汗を拭いたりトイレへ行ったり、軽い打撲がある者は冷却スプレーを患部に振ったりと、とりあえずやらねばならないことをすることで、なんとか平静を保とうとしているようにコロには見える。

「藤原――」

 頭からタオルをかぶる成に、声をかけたのは飛鳥井だ。

 彼もまた、徹底マークにあっている。しかもマッチアップするのは、あの難波宗だ。

 なんとかボールを得ても、難波と、もう一人別の選手の二人掛かりで潰されていた。

「俺のところからお前へ繋げられなくて、悪かったな」

「いや」と成は首を振る。

 飛鳥井はよくやっている。

 彼に相手が二人つくということは、どこかで人数差ができている。他の選手、例えば成が手薄になったスペースをつけば、一気に相手をくずせるのだ。

 成にもそれは分かっている。

 なのにできない――。

 成は歯痒さに唇を噛みしめる。

 そんな成の胸中を知ってか知らずか、飛鳥井は言葉を続けた。

「あいつ、「逃げるな」って、やたら怒ってたろ?」

 あいつ、とは勿論難波宗のことだ。

「昨日言った通り、それは蹴鞠のことなんだ。確かに俺はあいつから逃げた。でもそれは敗けたからじゃないぜ」

 飛鳥井は成の隣のベンチを指差し、「ここいいか?」と尋ねる。

 成が頭のタオルを取り頷くと、飛鳥井は腰を下ろした。

「俺が敗けて逃げたのなら、宗はきっとあんなに怒らないさ。ガキの時から蹴鞠をやらされてたってのは、あいつの方も同じでさ。俺は昔からあいつに敗けたことがなかった。何回やっても俺の圧勝だった。けどその差はどんどん縮まって、中学に入って最初にやりあった時、もうほとんど差がなかった。運よく勝てたって感じだったな。で、その時心のどこかで思っちまった。来年は、もうこいつに勝てないって。だから去年、俺は親戚の集まりに行かなかった。いや、行けなかった。敗けるのが嫌でな。俺はさ、あいつに勝ったまま逃げたんだ。いわゆる勝ち逃げってやつだ。それからだよ、俺が部活から逃げたのも、学校から逃げたのも。一回逃げると、それが癖みたいになっちまった」

 そりゃ宗もうちの親父も怒るよな、と自嘲し、スポーツドリンクを口に含む。

「けど俺の中で、それは「逃げ」じゃなかった。そんな風に考えたこともなかった。昨日お前に宗からの伝言を聞いた時も、まあそういう考え方もあるか、って感じたくらいだ。でもさ、さっきあのクソ長い校歌を歌ってる時、俺はあいつの顔も見れなかった。話しかけられても、目を見ることができなかった。マッチアップしてる相手のだぜ? 痛感したさ、逃げるってのはこういうことだって。自分で自分はごまかせないんだって」

 ヒョイっと、飛鳥井は空になったペットボトルをゴミ箱に投げる。それは回転しながら美しい弧を描き、さも当然のように箱の中へ吸い込まれていった。

 蹴るだけではなく、投げる方でも、いやスポーツ全般の才能があるようだと、コロは変な関心をする。

 もちろんそれを投げた当人は、そんなことを気にもとめず話を続けた。

「ハーフタイムでする話じゃない、って思ったか?」

 その問いに成は首を横に振る。

「いいや。だって続きがあるんだろう?」

 飛鳥井の真意を朧げに察し、成の目は光を取り戻しつつある。

 天才はベンチから腰を上げ、力強く頷く。

「ああ、俺はもう逃げない。それが何であろうとな。この試合も勝つ。言っとくがこれは強がりや虚勢じゃないぜ。勝てたらいいな、じゃない。一生懸命やればいい、じゃない。悔いの残らないように、じゃない。明確に、――勝つ」

 前半最初の1点を取られた後、コロが脳裏に描いた、実現不可能なはずの勝利へのプラン。

 その後飛鳥井が成に話したことは、まさにそれだった――。

 後半開始の笛が鳴る。

 天照たち神々は応援席で見るのに飽きたのか、ピッチ上空をボールの動きに合わせ自由に飛び回っている。

 山城中の選手がボールを持つと、「ほら転びなさい、オウンゴールしなさい」と、天照が彼らの耳元で囁く。

 どこが勝負事にはフェアなのかと、コロは呆れてしまうが、神力を制限された今、その囁きはなんの意味も持たないようだ。

 彼女の両親であるイザナギとイザナミはというと、さらに上空で社交ダンスのような踊りを二神優雅に楽しんでいる。なんとどこからか音楽隊まで連れてきているではないか。

 目障り耳障りなことこの上ないが、人間である選手達には影響がないので良しとしよう。

 変な神力で無茶苦茶にされるよりはマシだ。

 コロは、始まったばかりの試合に再び集中する。

 成は、先程ロッカールームで飛鳥井が提言したことを、何とか実現しようと足掻いている。

 だが、コロが実現不可能と諦めたことである。そう上手くいくはずもない。

 コロは、歯がゆい思いで成の奮闘を見守っていた。

 飛鳥井が成に言ったのは、非常にシンプルなことだった。

「俺と藤原、お互いのポジションでお互いの相手を上回る。それも圧倒的に」

 それができれば勝てる、飛鳥井はそう断言した。

 相手の圧倒的優勢は、成と飛鳥井を、数的優位で完全に封じ込めることで成り立っている。本来であれば、他の味方がそれによって空いたスペースをつくのが常道だが、残念ながらそれは期待できない。

 であるならば、成と飛鳥井が風穴を開けるしかない。

 システムで成り立っている戦略は、それが崩れると脆い。

 これ以上二人に人員を割くことになれば、山城中のフォーメーションは瓦解する。

 だが――。

 はっきりいって無茶である。

 それができるなら、最初からそうしている。

 そしてそれができないからこそ、こうして負けている。

 それに、上回れと言った当の本人、トップ下飛鳥井のマッチアップする相手は、ボランチの難波なのだ。

 近々プロデビューするという相手を圧倒するなど、いかな天才飛鳥井といえど、不可能に等しいだろう。

 案の定、後半が始まって1分と経たないうちに、秋菊中学は簡単にゴール前まで攻め立てられた。

 護の献身によるクリアで、何とか追加点を奪われずにすんだが、危ないところだった。

「やはり守備に回るべきか?」と成の中で迷いが生まれる。

「下がるなよ」

 ピッチの中盤でボールアウトになった時、飛鳥井はそう言った。

「俺たちが下がれば、仮に点を取られなくなったとしても、取れることはない。このまま敗けるだけだ。善戦なんてごめんだぜ。勝って全国に行くんだろ?」

 飛鳥井の言う通りだ。

 守備に回っていては勝てないのだ。

 再び秋菊ゴール前、またも護が危うい場面を救った。

 彼はよく頑張っている。失点が「4」で済んでいるのは、この秋菊の守護神のおかげといってよかった。

 その護から、一か八かのロングフィードが飛んだ。

「これはいい!」

 コロは思わずそう叫んだ。

 上手くすれば、絶好のカウンターになる。

 コロの願いが天に届いたか、ボールはピッチ中央付近の飛鳥井へと向かっている。

 飛鳥井は、見る者が震えるほど華麗なトラップをきめ、芸術的なドリブルで相手陣地へと切り込んでいく。

 難波はまだ戻れていない。

 そして左斜め前方には成がいる。

 残ったDFを躱すことができれば、ゴールのチャンスだ。

 初といってよい秋菊のチャンスに、応援団が興奮に沸く。

 その歓声を勢いに、飛鳥井は山城DFを一人、鋭く躱した。

 ゴールの予感に、アマテラススタジアムが揺れる。

 あとは成へのパスで、得点の場面である。

 だが飛鳥井が右足を振り上げたその時、後ろから追いついたのは難波宗であった。

 DFを躱した際の減速で、追いつかれてしまっていたのだ。

 難波は躊躇することなくスライディングで軸足を刈り、飛鳥井をピッチに倒した。

 ラストパスは成に渡ることなく審判の笛が鳴り、試合が止まる。

 難波のファールだ。

 彼は反則で失点を防いだのだ。

 とはいえこれは、それほど咎められることではない。

 サッカーという競技では、常套手段といえる。

 審判が難波に近寄り、イエローカードが示される。

 レッドで退場であれば占めたものだったのだが、そうは問屋が卸さない。

「これくらいで倒れちゃだめだよ、雅」

 倒れた飛鳥井が起きるのを手伝うために、難波が手を差し伸べながら言う。

 だが飛鳥井はその手を払い、一人で何事もなかったかの様に立ち上がった。

 どうやら怪我はないようだ。コロも成もホッとする。

 彼に何かあれば、秋菊の負けは決定的になる。想像するだにぞっとしない。

 決定的な場面は奪われてしまったが、得点のチャンスは続いている。

 ペナルティエリアの外でのファールのため、PKこそ得られなかったが、フリーキックのチャンスだ。

「ここで決めなきゃ、敗けだ。俺が蹴るぜ」

 ボールの前、飛鳥井が成に言った。

 後半5分を過ぎたところ、ここで決めて3点差にしなければ、勝利は夢物語となるだろう。

 だが難しい距離と角度だ。

 敵ながらここでファールを選んだ難波の判断は、天晴れといえるだろう。

 この天才をもってしても、決められるかどうか?

 山城中の選手達がゴール前、シュートを防ぐための壁を形成している。

 キーパーの指示による壁の微調整が終われば、笛が吹かれ、秋菊の誰かがフリーキックを蹴ることになる。

「雲まで届く、って言ったよな?」

「は?」

 そんな時、成が口にしたのは、全く要領を得ない言葉だった。

「昔の蹴鞠の人だよ。なんだっけ、シューセイ?」

「は? 蹴聖のことか? 今関係ないだろ?」

「あれだよ。あの絵」

 飛鳥井の問いに答えず、成がゴールの方向を指さし示す。

「絵?」と飛鳥井もコロも話の趣旨が見えないまま、ゴールの方へ目をやると、ゴールネットの後ろには、確かに絵と呼べるものがある。

 秋菊応援団が客席から垂らした、横に広がる長方形の応援幕だ。

 青々とした空の絵の中に「秋菊中学」と雲を模した文字で描かれている。菊を模したほうがいいのではないかとコロは首を捻るが、そんなことは今もこれからも全くもってどうでもいい。そして、一生懸命描いた人には悪いのだが、応援幕自体もどうでもいい。

 今はこのフリーキックに、最大限意識を集中しなければならない場面である。

 なのに何故、成はそんなことを?

「そうだ――、そうだよ。上じゃなくて、あそこを空だと思えばよかったんだ」

 もはや成のそれは独り言だ。ぶつぶつ理解不能なことを口にする様は、完全に集中を欠いているようにしか見えない。

 飛鳥井も「大丈夫か?」と訝しんでいる。

 この暑さにこの日差しだ、熱中症になってもおかしくはない。

 だが成の体調に異常がないことは、繋がっているコロが一番わかっている。

 であればこの、杳(よう)として知れない発言はなんだろう?

 コロは成の真意を察しようと心の中を覗き見るが、それは発言と同じで霧がかかったように判然としない。

 いや違う。

 この霧がかった不思議な映像を、コロは昨日見た。

 少しずつ霧が晴れていく。

 それは昨日より鮮明に。

 そして昨日より美しく。

 真っ赤な鳥居。

 果てのない石段。

 神社? いや、寺?

 烏帽子を被った少年。

 顔は見えない。

 優しく笑い、杖をつく老人。

 猿のような獣の手。足。

 猿の視点?

 湯気立つ茶飲みに和菓子。

 天高く打ち上げられる鞠。

 美しく美しく、それは雲まで届くほど――。

「ピッ」と合図の笛が鳴り、コロは我に帰る。

 不思議な映像に心を奪われてしまっている間に、フリーキックを蹴る時が来たのだ。

「――俺が蹴る」

 突如成がそう言うと、助走のためボールから距離をとり始めた。

「えっ、ちょっとお前、何言ってんだよ。フリーキックは俺の方が――」

 突然のことに驚く飛鳥井の声も、もはや成の耳には聞こえていないようだ。

 だが、不思議とコロは冷静だった。

 何か確信めいたものを、成と共有している気がした。。

 一歩、二歩、三歩、成の体は勢いを増し、ボールへと向かっていく。

 右足が上がった瞬間、コロは成の体からピョンと跳ね、ボールへと乗り移る。

「雲へ――」

 それは成の声か、それともコロのものなのか。  

 インパクトの瞬間世界から音が消え、衝撃がコロを貫いた。

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